母からの連絡はまだない。
ずっと待っているけれどまだない。
どうしたもんかなと思う。
何年かぶりに会った祖母は思ってたより顔色も良くて肌もつるつるして綺麗だった。
祖母はとてもチャーミングな顔をしている。
きっと若いころはとても可愛かったに違いない。
母方の家系はみんな目が大きくて可愛い顔をしている。
私もその血を受け継いでるんだぞ、と少し自分を勇気づけた。
いとこのお姉ちゃんも綺麗になっていた。
同い年のいとこも男らしくなっていた。
昔はお姉ちゃん達に虐められてよく泣いていたいとこ。
私に意地悪ばかりしてきた。
祖母の家の庭で写真を撮っていたら「ねぇ、かなちゃんも一緒に水族館行かない?」と後ろから急に声を掛けられてビックリした。
そして、あぁこの子は私をかなちゃんと呼んでいたな、とすごく懐かしくなった。
「このあとまたおばあちゃんのところに行くから、行かない」と言ったら残念そうな顔で「そっかぁ」と言った。
もう少し何か別の言い方があった気がしたし、何か別のことを話したかったのだけど、久しぶりに会ったせいもあって緊張して何にも言えなかった。
逃げるみたいに家に入った自分はまるで小さな子供に戻ったようだった。
ともくんは大人になったのだなと思った。
夜、温泉につかって開いた窓から空を見上げていたらとても悲しくなった。
お湯をなでると、たぷたぷと音がした。
いつかまたここに誰かと来ようと思った。
朝、病室をもう一度訪れた。
祖母は昨日より少し元気がなかった。
別れ際に手を握ると、体温が少し低かった。
そして「お前の家族は私たちじゃなくて別に居るんだから、早くお嫁に行きなさい。」と言われた。
「お父さんとお母さんの為に早く結婚しなさい。」
さすがにおばあちゃんにそう言われると早く結婚しなきゃいけない気になった。
おばあちゃんが元気な内に、旦那さんを見せてあげるべきな気がした。
たぶん間に合わないだろうなぁと思うと涙が出そうになった。
「でもお前はおばあちゃんの孫だからね。元気に暮らしなさい。」と。
自分が元気で暮らすことで誰かが安心するのなら、何がなんでも元気で暮らさなければと思った。
おばあちゃんの手はとても優しかった。
父から連絡がきた。
少し前に考えた「もう会えない」ということについて、違う角度からほんの少し考えた。
また近いうちに島根に行けたらいいのに。